本とダイアリー

金曜日あたりに更新していきたいな。

【本】絵のない絵本

あやかしのように、人間とは違う時間を生きている存在が、日本以外の地域にもいると思ったことはありますか?

 

何かの本で、日本は水に流す文化だということを見たことがあります。

嫌なことや辛いことはさらりと(時にはがんばって)忘れて生きていく。その中で、人ならざるあやかしは観察者として、人間の営みをずっと見ている。そして、ときおり人々に干渉してばちを与えたりする。

日本には、そういったあやかしに焦点をあてた物語や、あやかしに翻弄される人間を描いた物語などがあります。わたしはそういった物語が大好きです。

 

海外作品に出てくる妖怪と日本のあやかしの違うところは、人々がそれを認識できるかどうかにあると私は思います。

ヴァンパイアやゴーストなどは、人を襲うものとして描かれることが多い気がします。彼らは隠遁生活をしているか、変装して人の生活に溶け込んでいます。人間は彼らを知覚できるため、敵として描かれているように思います。

ですが、日本のあやかしは、人によって知覚されない存在として描かれています。あくまでも干渉は一方通行(あやかしのいたずらや怨念など)です。その寂しさがあやかしをさらに引き立てたりもするのですが。

 

そういう考えから、私は、あやかしのような存在は日本独自のものだと思ってました。

 

そう思っていた私にとって、この本はとても新鮮に感じられました。アンデルセンの『絵のない絵本』(矢崎源九郎訳、新潮文庫)です。

絵のない絵本 (新潮文庫)

絵のない絵本 (新潮文庫)

 

 この物語におけるあやかしはお月様です。作者の家に毎日やってきて(お月様なので、当然毎日やってきます。天気が良い限り)、今日見た景色や思い出深い出来事を語ってくれます。

お月様は何もしません。できることは、その場にいる人々をあたたかく照らすことと、優しいキスだけです。何もできないのかもしれません。でも、毎日のように人々の営みを、一番近くで見守ってくれています。

 

お月様は慈悲深く、どこまでもひとりです。お月様を思うと、とても寂しく、とても愛おしく感じられる作品です。

それではまた明日。おやすみなさい。