本とダイアリー

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西加奈子『円卓』

買った覚えはなかったけど、なぜか私の家に『円卓』の文庫本があった。なんでだろう…?

私はこれまで西加奈子さんの名前を聞いたことがなかったので、読んでみた。『円卓』は2010・2011年の間に『別冊文藝春秋』に連載された西加奈子の小説で、2014年に行定勲監督で映画化されている*1

円卓 (文春文庫)

円卓 (文春文庫)

 
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あらすじ

主人公の渦原琴子(こっこ)は祖父の石太、祖母の紙子、父の寛太、母の詩織、そして三つ子の姉、理子、眞子、朋美たちと公団住宅で暮らしている。六畳の居間にはつぶれた中華料理店から譲り受けた深紅の円卓があり、ただでさえ狭い部屋がさらに狭い。その円卓を囲む渦原家はいつもワイワイ賑やかで、古き良き家族の団欒という感じ。でも、こっこはそんな団欒が疎ましい。こっこは普通が大嫌い。ずっと特別な何かを探してる。

そんなこっこの周りには、個性的な人たちがたくさんいる。ものもらいを患い眼帯をつけた香田めぐみさん、両親がボートピープル*2だったゴックん、在日韓国人で名前の読み方が二つあり不整脈を持つ朴君、吃音がコンプレックスのぽっさん。そんなクラスメイトに対して、こっこは強い憧れを抱く。

そんな偏屈で口が悪くてかわいらしいこっこの、ひと夏の成長を描く。

地の文の視点

読んでいてふと気がついたことだけど、この小説は地の文の人称がコロコロ変わる。普通の地の文なら視点は固定されてるけど、『円卓』の地の文は、主人公目線でもなく三人称目線でもなく、なかなか自由に行ったり来たりする。

仲のよい友達や家族の考えていることって、しぐさや表情で「あ、こいつ今日は家族とケンカしちゃったんだろうなぁ」とか「あいつなんか良い事あったんだろうなぁ」とか、意外と分かってしまうものである。『円卓』の地の文は、この感覚に限りなく近くて、まるでこっこもぽっさんも私の親友みたいに思えちゃう。なので、こっこの言動一つ一つが、本当のクラスメイトがバカやってるみたいで笑える。

みんなちがって

しかも、『円卓』のなかには優劣がない!この物語には、ぽっさんや石太のような思慮深い人だろうが、鼻糞鳥居(このあだ名は一番ヒドイと思う)や森上みたいなアホだろうが、ほかにも、在日韓国人だろうがボートピープルだろうがレズビアンだろうが、みんなそれが当たり前でしょ?みたいに暮らしてる。まさに金子みすゞの『私と小鳥と鈴と』のような世界。みんなちがってみんないい。

この雰囲気も子供らしさかもしれないって思った。まだまだ知らない事が沢山あって、目に映る事すべてが新鮮で面白くて、かっこよくて…。しばらく忘れてたその感覚を、この作品のおかげで思い出せたなぁ。心がふかふかする。

 

感覚のことばっかり書いてるけれど、物語としてもとっても面白い。笑えてハラハラして感動する。面白いストーリーの中に読者を参加させるギミックを沢山盛り込む西加奈子さんすごいな。何の気なしに手に取った小説だけど、まさかこんなに笑えて泣けるとは思っていなかった。本当に読んでよかったと思う。

ちなみにこの本、私のじゃありませんでした。人の本を勝手に読んで勝手に感動してた。恥ずかしい。

*1:芦田愛菜主演。原作に負けず劣らずめちゃくちゃ面白いと聞いたので、絶対見る。

*2:戦争や圧制から逃れるために、ボートで新天地に向かった難民のこと。ボートに何十人も何百人もすし詰めで、めちゃくちゃ過酷でつらい非難だったらしいけれど、『円卓』ではそれほど悲惨に描かれていない。それも子供っぽい観点だなぁ。

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